最後の切り札 クロザピン(商品名:クロザリル)
複数の抗精神病薬による治療を受けても症状が良くならなかった。または、副作用により十分な量の抗精神病薬を使用できなかった患者さんに、効果を認められた世界で唯一の薬です。
日本では、決められた基準を満たした病院・医師でないと処方できないようになっており、沖縄県では当院がモデルとしてクロザピン治療の中心を担い、当院での治療のみならず他の医療機関と連携を取りながらクロザピン治療の普及活動を行っています。
クロザピンについて
クロザピンは、日本において2009年から使われており、現在は世界97カ国で使用されています。
他の抗精神病薬で十分な治療効果が得られない『難治性統合失調症』に対して、もっとも高い評価を受けている薬です。
- 長い間症状が改善せずに入院を余儀なくされていた方が、自宅で家族と暮らせるようになった。
- 頭に聞こえてくる声におびえ長年部屋に引きこもっていた方が、笑顔で人と会話し外出できるようになった。
長年つらい症状に苦しんできた患者さんやご家族にとって、希望の道をひらく可能性のある『最後の切り札』とも言われる治療薬です。そんな良く効く薬ですが、日本では長い間使用が許可されていませんでした。
副作用について
クロザピンは『無顆粒球症』という重い副作用が起きる可能性があるため、これまでの日本では使われずにきました。顆粒球は、血液中にある細胞のひとつで、身体を細菌の攻撃から守る働きをしています。顆粒球の数が減ってしまうと、細菌の攻撃から身体を守れなくなり、感染症にかかりやすくなってしまうのです。
「そんな怖い薬は使いたくない」と思う方が多いかもしれません。
ですが、そういった重い副作用があるにもかかわらず、この薬が今日世界中で数多く使用され、日本でも慎重な試験使用の期間を経て使用できるようになったのは、今までの治療では良くならなかった統合失調症にもこの薬が非常に高い効果を持ち、多くの患者さんの生活に希望をもたらしてきたという事実があるからです。
クロザピンを安全に使うために
クロザリルを使用するにあたって、病院・医療関係者・患者さんは、クロザリル患者モニタリングサービス(CPMS:Clozaril Patient Monitoring Service)というシステムにあらかじめ登録することが義務付けられています。
クロザリル患者モニタリングサービス概要
CPMSセンターでモニタリングされた情報によって、それぞれの患者さんに対して適切な頻度で検査が行われ、安全に使用されているかを絶えず確認することができます。仮に無顆粒球症を起こした場合にも、早期発見ができ、適切な治療を行うことで回復につなげることができるのです。
受診を希望される方へ
クロザピンによる治療を受けるためには、原則26週間の入院が必要です。ガイドラインや経験から26週間が経過すれば顆粒球減少症の危険性も少なくなることが分かっています。入院中に症状が改善し副作用がなければ、医師の判断で外出や外泊を行うこともできます。
受診の流れ
- かかりつけの病院様からの「情報提供書」「採血データ」「簡易薬歴チェックシート」等をご提供
- 家族面談を行い入院日を調整
- 入院(精神科医師を中心としたチーム医療により、退院に向けて環境調整等を行います)
家族面談の際にはお薬「クロザピン」に関してのご説明を丁寧に対応させていただいております。入院後は精神科医師を中心としたチーム医療を行い、退院に向けて環境調整等を行い退院を目指しております。
患者さん、ご家族のみなさまへ
クロザピンを使ってみたい、詳しい説明を受けたいとお考えの方は、主治医の先生とご相談なさって、紹介状をもらって受診いただくようお願いします。初回受診時はご家族のみでも可能です。電話にてご予約ください。
医療関係者の方へ
紹介をお考えになる患者さんがいらっしゃいましたら、地域医療連携室までお問い合わせください。
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